温室効果ガスを出さず、環境にやさしい電気自動車(以下EV)。
日本政府は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と2020年に宣言しており、一般企業においても脱炭素の取り組みとしてEVの導入が推奨されています。
そうしたEVについて、「ガソリン車との違いは?」「EVを導入するメリットとデメリットは?」という疑問を持っている方も多いはず。
本記事では、EVに関する基本的な知識と、企業が商用車としてEVを導入する際のメリット・デメリットなどを解説していきます。EVの導入を検討している方のお役に立てる内容になっているので、ぜひ参考にしてみてください。
電気自動車(EV)とは
EVは「Electric Vehicle」の略で、「電気自動車」を意味します。外部の電源から、車内に搭載されたバッテリーに充電した電気を使用して走行します。
ガソリンを使用しないため二酸化炭素を排出せず、環境負荷が低い自動車として世界中で注目されています。
また、EVは環境にやさしいだけでなく、ランニングコストの削減が期待できるといったメリットもあります。一方で、設備の導入や運用計画を行う必要があり、事前に知っておくべきデメリットもいくつかあります。
以下、企業がEVを導入するメリットとデメリットについて具体的に解説していきます。
企業がEVを導入するメリット
企業が商用車としてEVを導入する際、環境への貢献やコスト削減など、主に5つのメリットがあります。
- 環境にやさしい
- ランニングコストを削減できる
- 税制優遇が受けられる
- 政府や自治体の支援が受けられる
- 災害時に蓄電池として利用できる
以下、それぞれのメリットについて具体的に説明していきます。
1.環境にやさしい
EVは電気を使ってモーターを動かすため、走行中に二酸化炭素を排出しません。ガソリンなどの燃料を燃焼させて走るガソリン車とは異なり、環境にやさしいという特徴があります。
太陽光や風力、地熱といった地球資源の一部など自然界に常に存在する「再生可能エネルギー」を利用する場合は、発電の過程でも温室効果ガスを排出しないため脱炭素化に貢献できます。
また、日本政府は2050年までのカーボンニュートラルの実現に向け、2030年代半ばまでに「新車販売は電動車100%を実現する」という方針も発表しています。
環境にやさしいEV化および脱炭素化の動きは日本全体で進んでおり、企業においても商用車をはじめとするEVの導入が注目されています。
2.ランニングコストを削減できる
電気を使って走るEVは、価格の変動が大きいガソリン車に比べて燃料費が削減でき、メンテナンスにかかる費用も安く済むことから、ランニングコストの削減が期待できます。
たとえば、GO株式会社が先行して取り組む「タクシー産業GXプロジェクト」では、一般的なセダンのLPG車とEVの運用コストをタクシー車両で比較した際、あくまでタクシーでの比較ですが、6年間で1両あたり約360万円以上のコスト削減が期待できるという試算となりました。
上記の「運用コスト」には、「燃料費」や「メンテナンス費」などが含まれており、日常的に費用が発生する燃料費だけで見ても、1万7,000円/月のコスト削減が期待できる結果となっています。
また、EVはガソリンとその燃焼機関を必要としないため、エンジンオイルの交換や修理・点検といった車両のメンテナンスコストも削減できます。上図で見ても、LPG車とEVを比較した際のメンテナンス費用は約2万円/月も安くなります。
これらの結果から見ても、EVの導入によってランニングコストを削減することができ、企業にとってうれしいメリットのひとつと言えるでしょう。
3.税制優遇が受けられる
車両の購入時には「自動車税(環境性能割)」「自動車税(種別割)」「自動車重量税」、それと消費税を支払うのが一般的ですが、EVの購入時には税制優遇が受けられるため、ガソリン車よりも支払う税金が安くなります。
以下、それぞれの税金について説明します。
■ 自動車税(環境性能割)が非課税で無料
燃費性能などに応じて車両の購入時に支払う「自動車税(環境性能割)」は、EVであれば2026年まで非課税です。ガソリン車を購入する場合、車両の購入金額の1〜3%を支払う必要がありますが、EVなら0円です。
■ 自動車税(種別割)は「グリーン化特例」で75%軽減
車の種類や排気量などに応じて金額が決まる「自動車税(種別割)」は、ガソリンを使わないEVは「1L以下」の扱いとなり、基本的な税額は25,000円になります。
総排気量 | 2019年10月1日以降の | 2019年9月30日以前の |
---|---|---|
1L以下 | 25,000円 | 29,500円 |
1L超 ~ 1.5L | 30,500円 | 34,500円 |
1.5L超 ~ 2L | 36,000円 | 39,500円 |
2L超 ~ 2.5L | 43,500円 | 45,000円 |
2.5L超 ~ 3L | 50,000円 | 51,000円 |
また、EVを購入して1年度目は、環境性能の良い車を購入・所有する場合に対象となる「グリーン化特例」が適用されるため、ガソリン車よりもさらに税金は安くなり、「6,500円」と7割以上も税金が安くなります。
■ 自動車重量税は「エコカー減税」で5年目まで無料
車両の重量に応じて金額が決まる「自動車重量税」は、ガソリン車やEVなど車の種類に関わらず支払いが必要ですが、EVであれば「エコカー減税」が適用されます。
エコカー減税は、排出ガス性能および燃費性能に優れた車の自動車重量税を免税・軽減する制度で、EVにおいては車両購入時から5年目の車検(継続検査)時に免税の優遇が受けられます。
つまり、ガソリン車であれば購入から5年までに最低20,500円の自動車重量税がかかりますが、EVであれば0円です
4.政府や自治体の支援が受けられる
EVはガソリン車と比べて導入にかかる費用が高いイメージがあるかもしれませんが、「補助金」を活用することでお得に導入できます。
法人向けの補助金例
導入する車両の種類によっても異なりますが、法人向けには次のような補助金があります。
■ クリーンエネルギー自動車導入促進補助金
「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」は、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、燃料電池自動車(FCV)などの購入費の一部と充電設備の設置を対象とした補助金です。85万円を上限に補助が受けられます。
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(車両)
■ 脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金(タクシー)
「脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金 商用車の電動化促進事業(タクシー)」では、EVタクシーを対象に、150万円を上限とした補助金の支援が受けられます。
商用車の電動化促進事業(タクシー)
自治体による補助金例
自治体によっては、独自で補助金を実施している場合もあります。
■ 東京都:次世代タクシー導入補助金
東京都は、EVタクシーの導入を対象とした「次世代タクシー導入補助金」を実施しています。国補助金を受けている場合は上限60万円、受けていない場合は上限160万円までの補助を受けられます。
次世代タクシー導入補助金|東京都環境局
■ 神戸市:神戸市クリーンエネルギー自動車普及促進補助制度業
兵庫県神戸市は、市内に事務所もしくは事業所を有する法人等を対象とした「神戸市クリーンエネルギー自動車普及促進補助制度業」を実施しています。補助金の上限は最大24万円として、国補助金の交付額の3分の1の支援が受けられます。
神戸市クリーンエネルギー自動車普及促進補助制度
上記のように、EVの導入時には政府や自治体からの支援を受けられる場合もあります。うまく活用して、お得にEVを導入しましょう。
※上記は令和5年度事業について記載しています。対象などの詳細情報は、政府および自治体のウェブサイト等をご確認いただくか、実施団体にお問い合わせください。
5.災害時に蓄電池として利用できる
バッテリー充電済みのEVは、車両としての活用だけでなく「災害時や停電時の蓄電池」としても利用できます。
EVは一台の車両に大量の電気を蓄えておけるため、電気供給が途絶えた災害時などにも、数日間は電力をまかなえます。
台風や地震といった自然災害が多い日本では、常に停電のリスクがあります。一時的なものであれば問題ないかもしれませんが、停電の復旧までに1週間以上を要することもあります。
災害時の備えという意味でも、EVは役に立ちます。
企業がEVを導入する際のデメリット
EVは環境への貢献やコスト削減の面でメリットが大きい一方で、充電や導入にかかる費用など、考慮すべきデメリットもあります。ここでは、以下の4つのデメリットについて説明しています。
- 充電器の用意が必要
- 車両の価格が高い
- 充電に時間がかかるため計画が必要
- 一度の充電で走行できる距離が限られている
以下、それぞれの注意点や対策について説明していきます。
1.充電器の用意が必要
EVの導入時には、バッテリーを充電するための「充電器」を用意する必要があります。また、充電器の設置には工事が必要であり、設置場所の調査や検討が必要な場合もあります。
一方で、充電器は一度用意してしまえばガソリンスタンドに行く手間がかからず、人件費を削減できるといったメリットにもなります。会社の近くや敷地内に充電器を設置した場合、休憩中や夜間など車を使わないタイミングで充電することができ、必要なときにすぐ車を利用できるところも便利です。雨や雪が降っても充電は可能なため、安全面でも安心です。
また、充電器の設置費用や導入までの時間を省きたい場合は、公共の充電スポットを利用することもできます。「まずはEVだけを導入し、あとから充電器の設置を考える」という段階的な導入も可能であることが多いため、ぜひ自社の状況に合わせたEV導入を検討してみてください。
2.車両の価格が高い
ガソリン車には100万円以下で購入できる種類もありますが、EVは新車の購入に200〜400万円ほどかかります。この車両価格の高さは、EVを導入する際のデメリットの一つでしょう。
EV車両の価格が高くなる理由の一つとしては、大容量のバッテリーを搭載していることが挙げられます。
ガソリン車を動かす燃料タンクは金属や樹脂でできた箱のようなシンプルな構造であるのに対し、EVの動力となるバッテリーには、金属や液体などの素材が多く使用されています。動力部分の素材や構造から、EVの車両価格が高くなってしまうのは仕方がないことかもしれません。
ただ、前述したようにEVはガソリン車の購入よりも税制優遇や政府からの補助金などの支援が多いことも確かです。今後も世界的にEV化の流れが進み、ガソリン車の運用にかかる金銭的コストが上昇していくことも予想されるため、税制優遇や補助金を確実に活用できるタイミングでEVを導入しておくといいでしょう。
3.充電に時間がかかるため計画が必要
繰り返しになりますが、EVの利用には「バッテリーの充電」が必要です。この充電について、従来のガソリン車よりも「時間がかかる」ことも、EV導入の際のデメリットの1つとされています。
ガソリン車の燃料を満タンにするのにかかる時間は数分ですが、EVをフル充電するには最短で30〜40分、長いと10時間以上かかります。EVの充電時間については「普通充電器」や「急速充電器」などの種類によりますが、ガソリン車よりもエネルギー補給に時間がかかるのは確かでしょう。
EVの導入と運用を考える上では、「いつ充電するか」「どこで充電するか」といった充電の計画が不可欠です。先にお伝えしたように、会社の近くや敷地内に充電器を設置できる場合は、休憩中や夜間など車を使わないタイミングでの充電が可能です。
4.一度の充電での走行距離が限られている
EVは一度の充電で走行できる距離が限られているため、車両の使用前には十分な充電が必要です。
エネルギー切れの問題はガソリン車においても同じですが、EVは移動中にバッテリーが切れた場合、充電に数十分から数時間かかります。
充電施設の数がガソリンスタンドよりも少なく、場所が限られていることもあり、ガソリン車のように気軽なエネルギー補給と移動再開をすることは難しいでしょう。
よくある疑問:電力の価格が高騰しても、EVを使い続けられる?
電気をエネルギーとするEVを利用する際、「電気代の高騰が今後も続いたら?」と心配する声もあるかもしれません。
この疑問については、効率的なエネルギーマネジメントシステムを提供する会社に電気供給およびEVの運用を依頼することで解決できます。
たとえば、タクシーのEV化と再生可能エネルギーの活用をはじめとした「タクシー産業GXプロジェクト」を実践しているGO株式会社は、電力エネルギーと運行のマネジメントを同時に実現できるシステムを開発しています。
同社はこのシステムを活用することで、電力を一括で調達でき、電力が安いときはもちろん、価格が高騰しているときにも安価に電力を供給できます。
繰り返しになりますが、電力の価格高騰が不安な場合は、効率的なエネルギーマネジメントを実現できる会社にEVの導入・運用の協力を依頼すると良いでしょう。
まとめ
企業が商用車として「電気自動車(EV)」を導入する際の、メリットとデメリットについて紹介しました。
電気をエネルギーとして使い、排気ガスを出さずに走るEVを導入することで、脱炭素化をはじめとした環境への貢献ができます。また、金銭面や時間面でのコスト削減も期待でき、企業にとってうれしいメリットと言えます。
その一方で、導入にかかる費用や充電計画の必要性なども無視できない要素であるため、EVの導入時には、メリットとデメリットを十分に理解した上で検討を進めましょう。
EVと充電器の導入から運用まで、すべてGOにお任せください
GOは、EVの導入から充電器の設置、効率的なエネルギーと運行マネジメントシステムの構築、助成金の活用まで、包括的なサービス提供を行っています。お客様の事業特性や車両の運行実態、お悩みなどに合わせたご提案およびサポートも可能です。
EVの導入をご検討の際は、豊富な実績とノウハウを持つGOに、ぜひ一度ご相談ください。