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GX(グリーントランスフォーメーション)とは?基礎知識から企業が行うメリット・事例まで解説

地球温暖化や自然災害による深刻な影響を防ぐため、原因となる温室効果ガスを削減する脱炭素化と、経済・産業成長を同時に目指す「GX(グリーントランスフォーメーション)」が世界中で求められています。
日本においても「2050年カーボンニュートラル」を国際公約としてかかげ、その実現を目指したGX関連の法律や制度の充実、GXを推進する企業への積極的な支援などが行われています。
そんなGXについて、

「GXの基礎知識や注目される理由・背景を知りたい」
「企業がGXに取り組むメリットは?」
「GXを推進する企業の事例・実績を知りたい」

などとお考えの方は多いのではないでしょうか?
この記事では、GXや脱炭素に関する基礎知識から、企業がGXに取り組むメリット、すぐにはじめられるGXの取り組み、実際のGX事例などを紹介します。

GX(グリーントランスフォーメーション)とは?

GXとは、Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)を略した言葉です。
これまでの化石燃料を中心とした産業・社会構造から、CO2を排出しないクリーンエネルギー中心に転換することを意味します。

化石燃料には石油、石炭、天然ガスなどがあり、燃やすことで温室効果ガスが発生します。これに対して、クリーンエネルギーは温室効果ガスを排出しない、環境にやさしいエネルギーです。太陽光、風力、水力など、枯渇することのない再生可能エネルギーや、原子力発電などを用いたエネルギーのことをいいます。

GXにおける重要なポイントは、3つあります。

  1. 温室効果ガスの排出削減(脱炭素)
  2. 再生可能エネルギーの安定供給
  3. 持続可能な経済成長

CO2・温室効果ガスの排出を削減しながら、エネルギーを安定供給し、同時に経済成長も実現する。これは2022年12月、日本政府が公表した政策「GX実現に向けた基本方針」にもまとめられています。

「GX実現に向けた基本方針」経済産業省 資源エネルギー庁

脱炭素とカーボンニュートラル

GXで欠かせない取り組みが「脱炭素」です。脱炭素とは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にすることです。
温室効果ガスには、CO2(二酸化炭素)のほかにメタン、一酸化炭素などが含まれますが、CO2が排出量の9割以上を占めています。そのため、温室効果ガスの削減においてはCO2対策が最重要であり、「脱炭素」という言葉が使われています。
脱炭素の代表的な取り組みには、次の2つがあります。

  1. 日常生活・事業活動などによるCO2排出の削減
  2. 排出されたCO2を打ち消す

CO2は、動物や植物の飼育・栽培から、ものづくり、移動まで、現代のほぼすべての生活および経済活動によって発生します。そのため、CO2の排出量をできるだけ減らすこと、排出されたCO2を植物による吸収などで打ち消す取り組みを行い、実質ゼロを目指す必要があります。

出典1:脱炭素ポータル(環境省)「カーボンニュートラルとは」

このCO2削減および排出量を打ち消す脱炭素の取り組みは、「カーボンオフセット(Carbon Offset)」とも呼ばれています。また、CO2排出量と打ち消した量の差し引きがゼロになる状態を「カーボンニュートラル(Carbon Neutral)」といいます。
脱炭素の取り組みにより、実質的にCO2の排出量がゼロになった社会は「脱炭素社会」と呼ばれます。

脱炭素とGX

GXと脱炭素は同じ意味と捉えられることがありますが、実際は目指すところがやや異なります。
脱炭素は「温室効果ガスの排出量をゼロにする」ことそのものを目指しており、GXはさらにその先の「持続可能な経済成長」も目指します。
つまり、GXの実現においては脱炭素が不可欠であり、積極的に温暖化対策を行いながら、産業構造や経済社会の変革、発展を目指すことが世界で求められています。

GXが注目される理由・背景

なぜいま、GXが注目されているのでしょうか?世界や各企業がGXに注目する理由・背景を説明します。

1. 地球温暖化・自然災害対策

産業革命以降、化石燃料を主とした産業・社会の発展により、わたしたちの生活は便利で快適になりました。一方で、温室効果ガスの排出増加による地球温暖化や自然災害が深刻な問題になっています。このまま温室効果ガスが増えつづければ、地球に住むことが難しくなるとも言われています。
そうした事態の悪化を防ぐため、2015年のパリ協定では「地球温暖化による平均気温の上昇を、産業革命前と比べて2度以下に抑える」ことを目標に、2050年までにカーボンニュートラルな世界の実現を目指す方針が決定されました。
地球温暖化や気候変動による最悪の影響を避けるためにも、積極的な脱炭素およびGXが全世界で求められています。

2. 化石燃料の価格高騰

生活や企業活動に欠かせない燃料の価格高騰も、GXが注目される理由の一つです。
燃料価格は2021年から上昇傾向にありましたが、コロナ禍や2022年のロシアによるウクライナ侵略などをきっかけに、現在も高騰をつづけています。
経済産業省によると、2022年における世界各地の天然ガス市場では過去最高値が記録され、1973年の石油危機以来のエネルギー危機が危惧されています。レギュラーガソリンにおける実売価格の推移を見ても、2021年頃から価格が高騰しつづけているのがわかります。

出典2:e燃費「ガソリン価格推移グラフ - 最近5年間のレギュラー価格」

こうした世界情勢や燃料価格の高騰による影響を受けず、エネルギーコスト削減、安定的なエネルギー供給を目指すためにも、クリーンエネルギーを活用したGXの実現が欠かせません。

3. 政府の「2050年カーボンニュートラル」宣言

政府が脱炭素化を推進していることも、GXが注目される理由の一つです。
2020年10月、当時の菅内閣総理大臣は、所信表明演説において「わが国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と発表しました。
これを受け、日本の企業においても脱炭素化への計画策定と、具体的な施策の実施が求められるようになりました。
また、2021年4月に開催された気候変動サミットにおいても、日本政府は「2050年目標と整合的で、野心的な目標として、2030年度に、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す。さらに、50%の高みに向けて、挑戦を続けていく」と表明しました。
こうした国際公約を実現するためにも、GXへの積極的な取り組みが求められています。

4. 新たなビジネス・経済成長の可能性

GXは新たなビジネス機会につながり、経済成長の原動力になることも期待されています。
日本政府は、2050年カーボンニュートラル宣言と産業競争力の強化・経済成長をあわせて実現するため、新たな法律の制定や、企業・事業への支援に積極的です。

たとえば、経済産業省は2021年に「グリーンイノベーション(GI基金)」を国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)へ造成し、約2兆円をかけて、GXを推進する企業を対象とした長期的かつ継続的な支援をしています。

出展3:経済産業省「カーボンニュートラルの産業イメージ」

また、2023年には「GX推進法」や「GX脱炭素電源法」など脱炭素に関わる法案が成立しました。2024年にはGX推進法に基づく20兆円規模の「GX経済移行債」の発行も決定しました。GX経済移行債は、個別銘柄「クライメート・トランジション利付国債」として、2024年2月から10年間にわたり発行される予定です。
これらの政府の動きは、GXに関わる事業・ビジネスを行う企業にとって追い風となり、日本経済の成長にもつながるでしょう。前述した制度・支援に関する詳細は、各公式サイトをご確認ください。

5. 有価証券報告書における情報開示の義務化

2023年3月期決算企業から、有価証券報告書等において「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設され、サステナビリティ情報の開示が求められるようになりました。

出展4:金融庁「サステナビリティ情報の記載欄の新設等の改正について(解説資料)」

「サスティナビリティに関する考え方及び取組」では、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標についての情報開示が求められています。
このうち「指標及び目標」は必須項目ではありませんが、「GHG(温室効果ガス)排出量の削減目標と実績値」などの記載が推奨され、企業の脱炭素化やGXへの姿勢が評価されるようになりました。
政府によって非財務情報の開示が導入されたことも、企業における脱炭素およびGXが注目されている理由です。

サスティナビリティ情報の開示に関する特集ページ|金融庁

企業がGXに取り組む4つのメリット

企業がGXに取り組むことで、環境保護や企業イメージの向上、コスト削減、ビジネス・事業成長のチャンスなど、多くのメリットが得られます。以下、それぞれのメリットについて紹介します。

1. 温室効果ガス削減・気候変動対策

前述したように、温室効果ガスの排出は、地球温暖化や自然災害といった環境問題の原因になっています。このまま大気中の温室効果ガスが増えつづければ、異常気象や自然災害などが増え、事態はますます深刻化していくでしょう。
企業が温室効果ガスの排出量を削減し、GXに取り組むことで、環境への負荷が軽減し、持続可能な未来の実現に貢献できます。

2. 企業イメージの向上

世界の最重要課題とされているGXに取り組むことは、企業イメージの向上にもつながります。
GXに関する活動や非財務情報を公開することで、環境保護および事業の成長を同時に目指すクリーンな企業として、消費者や従業員、投資家、採用応募者などに良い企業イメージを与えられるでしょう。
また、環境や社会に配慮した事業を行い、適切な気候対策を行うことで、投資家・ESG投資家からの支援が充実することも期待できます。同じように金融機関からの融資も得られやすくなるため、資金調達力の向上、企業成長の促進にもつながります。

3. コスト削減

省エネ対策や再生可能エネルギーの活用により、コスト削減ができます。
企業が取り組める省エネ対策は後述しますが、空調設備や照明の使い方を見直し、適切に使用することで、CO2・温室効果ガスの排出を減らしながら、電気代を安くできます。
使用する電気についても、太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入することで、発電中に温室効果ガスを発生させない脱炭素に貢献しながら、化石燃料の価格高騰の影響も避けられます。将来的なエネルギー価格の上昇リスクも軽減できるでしょう。

4. ビジネスや事業を成長させるチャンス

企業がGXに取り組むことは、新たなビジネスや事業成長のチャンスにつながります。
繰り返しになりますが、GXには脱炭素化が必須です。これまで化石燃料を中心に日常生活・事業活動を行ってきた日本や世界にとっては、脱炭素の実現に向けた技術や事業の提供など、多くのビジネスチャンスがあります。
たとえば、CO2を排出しない再生可能エネルギーの導入や提供、電気自動車の開発・導入、生物資源を用いたバイオマス発電の実施など、さまざまな業界で脱炭素に関するビジネスが行われています。大気中に排出されたCO2を吸収・削減する活動を行い、排出削減量に見合った「クレジット」を売買できる国の制度(J-クレジット制度)なども約10年前から実施されています。
政府や自治体からの支援が充実しているいま、GXに関する新しいビジネスへの挑戦や、事業成長を目指した取り組みができるチャンスです。

企業ができるGXの取り組み例

GXの取り組みとしてすぐに実践できるのが「脱炭素」のための工夫です。まずは事業を通じて排出する、CO2・温室効果ガスを減らすところからはじめてみましょう。

1. オフィスの省エネ・節電対策

いますぐはじめられるGXとして、オフィスの省エネ・節電対策があります。企業の規模に関わらず、適切なエネルギーの使用を心がけましょう。

具体的には、次のような省エネ対策が可能です。

  • データセンターの環境負荷対策
  • 空調設備の適切な使用
  • 不要な照明をオフにする
  • 服装の工夫(クールビズなど)
  • 省エネ診断を受ける など

オフィスの省エネ・節電対策を行うことで、温室効果ガスの排出を削減すると同時に、コスト削減も期待できます。自社で取り組めることはないか考え、実践してみてください。

2. 商用車のEV(電気自動車)化

商用車をEV(電気自動車)化することも、GXの取り組みです。

EVはガソリンを使用しないため、CO2を排出せず、環境負荷が低い自動車として注目されています。前述した「ガソリン価格の高騰」の影響も受けないため、ランニングコストの削減にもつながります。
設備の導入や運用計画を行う必要はありますが、税制優遇や政府・自治体の支援が受けられること、災害時に蓄電池として利用できることなど、多くのメリットがあります。自社で車両を使用する場合は、EVの導入も検討してみてください。
EVや充電器に関する基礎知識、詳細なメリットなどは、下記の記事をご参照ください。

3. 再生可能エネルギーの導入

繰り返しになりますが、太陽光や風力、地熱などを使った再生可能エネルギー(再エネ)は、発電の過程で温室効果ガスを排出しないため、脱炭素化に貢献できます。

再生可能エネルギーには、導入コストや設備投資などが必要ですが、国や地方自治体などから支援が受けられる場合もあります。
たとえば、農林水産省や環境省は、再生可能エネルギーの利用を促進する補助事業を行なっています。また、令和6年度(2024年度)エネルギー対策特別会計予算案においても、再生可能エネルギー設備の導入に関する補助金・助成金が予算案に盛り込まれています。それぞれの支援に関する詳細は、各制度の公式サイトをご確認ください。

GO株式会社のGX取り組み実績

GXに関する企業の取り組み事例として、GO株式会社の実績を紹介します。
GO株式会社は、脱炭素社会の実現に向けて、モビリティ産業領域をはじめとしたGXを実践しています。

そんなGO株式会社が取り組む「GX事業」では、EVの導入からエネルギーマネジメントまで、EV関連のサービスを包括的に提供しています。
モビリティ領域における「脱炭素化」の推進には、電力・EV車両・EV充電器など、さまざまな環境整備が必要です。GOは豊富なノウハウやネットワークを活用することで、EV車両の導入から充電器の設置、エネルギーマネジメントシステムまで包括的なサービス提供を行なっています。

GO株式会社の脱炭素サービスGX

商用車全般のGX化に向けた取り組み

脱炭素に向けたGOの具体的な取り組みとして、GI基金を活用したタクシー産業GXプロジェクト実施、全国各地の都市部を中心としたEV(電気自動車)タクシーの本格運行などがあります。

以下、タクシー産業GXプロジェクトおよびGX事業におけるクリーンエネルギーの活用実績について紹介します。

タクシー産業GXプロジェクトの発足・実施

2022年7月、NEDOによる「グリーンイノベーション基金(GI基金)事業/スマートモビリティ社会の構築」において、GOが採択されました。

GI基金の採択を受け、2022年12月にタクシー産業全体で脱炭素化を目指す「タクシー産業GXプロジェクト」を発足。東京・神奈川・福岡にてEVタクシーの試験運転を実施しました。
2023年4月からは、全国各地でEVタクシーの本格運行を開始しました。都市部を中心とした全国約100社のタクシー事業者に対して、エリアごとのタクシー運行特性に応じた充電計画生成といった運行面での支援と並行して、EVや充電器の提供といった設備面でも支援をはじめました。

これらの取り組みにより、約1年後には全国のEV化を約3倍に拡大、CO2総削減量は1,122トンに至りました。具体的な「タクシー産業GXプロジェクト」の1年間の実績は、以下の記事をご覧ください。

「タクシー産業GXプロジェクト」開始1年・数字で振り返るGOのGX

クリーンエネルギーの活用

GOのGX事業では、CO2を排出しないEV車両の導入支援や効率的なエネルギーマネジメントシステムの提供に加え、化石燃料に頼らない再生可能エネルギーの活用も実践しています。
GX事業に関する詳細やパートナー企業さまとのインタビュー記事は、以下のページにてご覧いただけます。よろしければご参照ください。

GXは企業・事業の成長においても重要な要素の一つです

これまでの化石燃料を中心とした産業・社会構造から、CO2を排出しないクリーンエネルギー中心に転換する「GX(グリーントランスフォーメーション)」について解説しました。
GXの実現は、日本および世界の最重要課題の一つであるとともに、企業や事業にとっても大きなメリットがあります。脱炭素を推進する活動・投資を積極的に行い、脱炭素化と成長を両立できる企業は、持続可能な経営力を持つ企業として、消費者や投資家にも評価されるでしょう。
オフィスの省エネ対策や節電、商用車としてのEV(電気自動車)導入、再生可能エネルギーの活用など、できることはたくさんあります。国や自治体などの支援も最大限に活用しながら、GXを推進していきましょう。

出典

  1. 脱炭素ポータル(環境省)「カーボンニュートラルとは
  2. e燃費「ガソリン価格推移グラフ - 最近5年間のレギュラー価格
  3. 経済産業省「カーボンニュートラルの産業イメージ
  4. 金融庁「サステナビリティ情報の記載欄の新設等の改正について(解説資料)


※この記事は、2024年2月時点の情報を元に作成しております

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