Case Study
商用車2023.11.08

大和エネルギー、GO Inc.のGX事業へ再生可能エネルギーの電力供給とEVステーションを施工

  • EV車両導入
  • 充電器設置
  • 大和エネルギー株式会社

    大和エネルギー株式会社

    大和ハウスグループの省エネサービス企業として1999年に設立。省エネルギー事業と再生可能エネルギー事業の両軸から、企業の脱炭素に向けた取り組みを推進。風力発電・太陽光発電の発電事業者として300MW以上の実績があり、事業のみにとどまらず、設計や建設、運用・保守、長期的な価値向上のサイクルの改善までを一貫して行う。

    拠点:大阪府・東京都・宮城県従業員数:209名(2023年4月時点)

はじめに

GX事業において、GOでは大和エネルギーさまから実質再生可能エネルギー100%の電力と充電設備の施工業務の供給を受けています。
今回は大和エネルギーさまの東京オフィスにお伺いし、事業統括本部の室(むろ)さんに、電力提供の経緯や実現までのエピソード、事業内容や脱炭素への取り組み、GXへの想いなど、さまざまなお話を伺いました。

(左)大和エネルギー株式会社 室 和利さま(右)GO株式会社 山田 洋介
  • お話を伺った方々
    • 大和エネルギー株式会社 室 和利さま(事業統括本部 事業企画グループ グループ長 )
    • GO株式会社 山田 洋介(GX事業本部 電力技術部 部長 / 充電器を設置や充電設備の設置・施工管理、電力の調達を担当)

大和エネルギーのミッションや会社紹介

国内の脱炭素化に向けた再生可能エネルギー事業を推進

— まずは、大和エネルギーさんの事業内容について教えていただけますか。

室(以下、敬称略):当社は、大和ハウス工業の100%出資のグループ企業です。エネルギーを「へらす・つくる・ためる・おくる」をキーワードとするビジネスを基軸に、エネルギーと地球環境が調和する社会を創造していくことをミッションとして日々活動しています。
設立時は省エネルギービジネスを中心とした会社でしたが、2007年から風力発電事業を開始。大和ハウスグループの中でも一番最初に、エネルギー専門企業としての再生可能エネルギーの事業をスタートさせました。
現在の主軸は、太陽光発電事業です。太陽光発電所の数は全国に150カ所以上。これらの事業を通して、大和ハウスグループや国内企業の脱炭素化への貢献を行っています。

大和エネルギーが考えるGX

将来的には総合的なカーボンニュートラルの実現へ

— 大和エネルギーさんのGXへの想いについて聞かせてください。

室:わたしたちはもともと、省エネやDR(デマンドレスポンス)といった消費エネルギーを包括的に削減すること・電力デマンドを抑えてコスト削減することへの貢献を行ってきました。現在は、地上設置型や屋根設置型の太陽光発電所を中心に、自ら発電した電気を販売する取り組み(IPPやPPA)を拡大しつつあります。今後はそれだけでなく、営農型の太陽光発電や、ため池・カーポートを活用した発電など、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)に頼らない発電を計画しています。そして、GOさんのように、CO2フリーな電力を需要家さまにお届けするのが直近のミッションです。

大和エネルギーにとって、今回のようなEVステーションを通した電力サービスの提供は、GOさんがはじめてです。GOさんのおかげで新しい領域に携わることができました。充電器を設置するビジネスに取り組んでいる企業は他にもありますが、EV車両の準備と同時にEV充電網を展開されていることにGOさんならではの魅力を感じています。わたしたちはGOさんの想いに賛同し、ご一緒させていただいてます。

— 大和ハウスさんは、日本企業のなかでもいち早くRE100*に参画していますね。

室:はい。親会社の大和ハウス工業は、もともと環境経営に重きを置き、早い段階から省エネ・再エネに取り組んでいます。
現在、大和ハウス工業では、2022年度にRE100を達成。そのうち約95%は、自社グループ運営の再エネ発電所由来の非化石証書を活用しています。2023年度には、グループ全体でRE100を達成を目指しています。2030年までには、原則、新築の住宅や建物すべてに太陽光発電を搭載することで、カーボンニュートラルと再生可能エネルギー100%のまちづくりを推進します。事業活動においては、省エネ対策の徹底や新築施設への再生可能エネルギーの活用により、全施設・全事業プロセスでのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量ゼロ)の実現を目指しています。今後はサプライヤーの皆さまにもご協力いただきながら、総合的なカーボンニュートラルを目指していきたいと考えています。

*RE100:2014年に国際環境NGOが立ち上げた、企業の国際的な連合体。企業が事業運営に使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目標としている。

大和エネルギーから見たGOのGX事業の強み・独自性

GOの強みは、創業時から培ってきたIT分野のリソースと知見

— 大和エネルギーさんとGOさんの出会いを教えてください。

室:GOの山田さんとは前職が同じだったんです。前職はいまと同じような再生可能エネルギー・省エネルギーの会社で、私は技術営業を担当していました。そのときに山田さんと一緒になり、退職したあともお互いに何しているんだろうと気にかけていました。

山田:私は前職から蓄電池関係の業務を進めてきたので、発電系の内容には一応知見があります。室さんとそういった会話をしていく中でGXの話になり、「大和エネルギーさんにならお願いできるかも」と、お声がけさせていただきました。

— 山田さんから見て、大和エネルギーさんの強みは何だと思いますか?

山田:大和エネルギーさんは全国で電力サービスの提供が可能です。脱炭素への意識も高く、グループ全体でRE100に積極的に取り組んでいるところも、わたしたちGOの目指しているところに合致します。

さらに今回は、GOのGX事業向けにEV充電に特化した特別なプランを検討していただけたことが、大きな決め手となりました。他社では、料金体系が一律で、いわゆるパッケージのようなものから自社に合ったプランを選ぶ…といったケースですと、わたしたちの要望や予算に合わないことも多いんです。その点で、大和エネルギーさんは大手企業のグループにも関わらず柔軟に対応してくださり、スピード感も速く大変助かりました。

— では反対に、室さんから見て、GOさんの強みは何だと思いますか。

室:GOさんは、わたしたちにはないIT分野のリソースや知見を持っています。

われわれは「いつ、どこで、どの車両が充電するから、電気を送ってください」という具体的な要求が出ないと動けません。GOさんは今後、それを予測する技術を確立していくはずです。GX事業におけるEVは、いまはまだ数百台かもしれません。これが数千台、数万台と増えていったときに、電気を必要な時に必要なだけ適切な場所へお届けし、きちんと使いきることがより正確にできることは大変魅力的です。

そういったGOさんのIT技術は大きな強みだと思いますし、優秀なスタッフさんも揃っているので、大和エネルギーもそれに応えられるシステムを構築していく必要があると感じています。

— 先ほど山田さんが大和エネルギーさんのスピード感が強みだとお話されていましたが、実際に話が出てから契約・施工までどのくらいかかりましたか。

山田:話が出たのは1年前くらいですね。契約締結後は、驚くほどのスピードで施工いただきました。

室:GOさんに魅力を感じているから、そのような動きがとれました。さすがにわたしたちも、ある程度の手数を踏まないと社内承認を得られませんし、確実性の低いビジネスモデルですと、すぐには進められませんから。GOさんがしっかりとしたビジョンをお持ちで、計画もはっきりと示されていたので、会社を説得できました。

山田さんのように、電力業界のことを理解している人がGOさんの中にいることも大きな安心材料でした。「”とにかく”安く、短期間で施工やサービス提供してほしい」とおっしゃるお客さまもいる中で、われわれの施工・電力供給サイドのことをご理解のうえで交渉にあたっていただけたのは、パートナー企業としまして、重要なことです。

プロジェクト進行の裏側と、GX事業における今後の取り組み

電力市場が読めない状態での進行にハラハラドキドキ

— スピード感の裏側ではすごく大変な部分もあったのではと思います。乗り越えたハードルなどありましたか?

室:そうですね、ポジティブに聞こえているかもしれませんが、実はそうでもなかったんですよ。われわれとしては、ある程度腹を括らないといけないことも正直ありました。「もしかしたら赤字になるかも?」という懸念もありました。そこは山田さんにもいくつか心配事としてお示しさせていただき、「AかBかどちらにしましょう」と2つのプランをご提示しました。当然、GOさんにとってメリットがある方を選択いただいていますが、私たちも電力市場が読めないところもあったので、この1年ドキドキしながら過ごしていました。ここまで、なんとか無事に乗り越えることができ、安心しています。いまはGOさんの早い動きに合わせるために、社内にGX事業の専門スタッフを置いて対応しています。

— 山田さんはいかがしょう?不安なことや思わぬハプニングなどありましたか?

山田:今回、いままでの概念とは異なる電気の引き込み方をしています。そこの申請がかなり複雑で、電気がこなかったり、予定していた日程が全く合わないといった大混乱を生じてしまいました。大和エネルギーさんにしっかりとイニシアチブをとっていただいたおかげで、なんとかなりました。

不安だったのは電気のプランですね。提示いただいた金額で本当に大丈夫かどうか確信がなくて。「怖い」と言っていてもコンセンサスがとれないので、自分を信じるしかなく…。結果、なんとかうまくいってよかったなとホッとしています。室さんがおっしゃっていたように、大和エネルギーさんに専門のスタッフさんがいらっしゃり、相談相手として腹を割ってお話できたのは大きかったと思います。

両社の知見を活用し、「地産地消」のGXで地域を巻き込む取り組みも

— 今後、双方で進めていきたいことはありますか?

室:具体的に決まっていることは特にありませんが、GOさんからGXについての知見や情報を提供いただけると、より魅力的な料金メニューの提案やエリア別のプランニングなど、きめ細やかな対応ができますし、全国にあるGOさんの情報網を使った新しいビジネスにも参戦できるのではないかと思っています。また、今後大和エネルギーが取り組む「電気を貯める」ためのノウハウも蓄積していけるだろうと期待しています。

山田:そうですね、GOも予測技術のノウハウが増えてきましたので、大和エネルギーさんには、柔軟なプランニングという意味でのご相談は常にさせていただきたいです。もともとアセットを多数お持ちですので、それをGOがどう活用していけるかを考えて、お付き合いをさせていただければと思っています。

室:もうひとつ考えているのは、電気のより精緻な地産地消です。わたしたちは全国に発電所を持っていますので、たとえば、秋田県で走るEVには秋田県の太陽光でつくった電力を使用し、東京で走っているEVには東京で発電した電力を使う、いわゆる「地産地消」ができればいいなと考えています。それがGOさんにとってメリットがあるかどうかは分からないのですが、地域のエネルギーで走るEVということが、事業者さんにとってPRのひとつになればいいなと思っています。

大和エネルギーとしての今後の役割

農地の有効活用や、非常時の蓄電池としてのEV活用を推進したい

— 大和エネルギーさんが今後力を入れていきたいことがありましたらお聞かせください。

世界的な流れとなっている脱炭素社会への取り組みは、今後ももちろん外せません。そのなかで、「土地のデュアルユース」をさらに進めていきたいと考えています。車庫の屋根やスーパー、物流倉庫への太陽光パネル設置はすでに進めていますが、太陽光発電設備を設置する為の適地が年々減少しています。そこで、農地を活用した発電事業に特に注力しています。

日本の課題のひとつに、荒廃農地や耕作放棄地の増加があります。これまで農作物を育てていた土地が、農家さんの高齢化などにより放置され、作物がつくられなくなっているんですよね。そんな土地を使って太陽光発電をしながら人間のエネルギーになるような農作物をつくる取り組みを進め、食料自給率の面でも少なからず貢献できればと思っています。

GXの面ですと、再エネ発電所が、地域のためにもなるような機能を兼ね備えることも重要と考えています。例えば、自社で使っている発電所に自立運転機能をつけ、停電時等に地域の皆さまに有効活用していただくことや、地域のお祭りなどのイベント時に再エネ電力を提供するなど、今後、開発を進めていきたいと考えています。また、EVは非常時に電力を届けることが可能な「移動式の蓄電池」ともいえますので、災害が起きたときに地域の皆さまに使っていただけるようなサービスも展開したいと思っています。

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