昭和25年(1950年)、福岡市にて創業。多様化するお客さまのニーズに応えるべく、近年ではタクシーアプリ『GO』による配車、キャッシュレス決済の導入、インバウンドのための観光や外国語対応などにも積極的に取り組んでいる。GXプロジェクトにより、2024年2月時点でEVタクシーを21台導入済み。
福岡交通・文化タクシー、脱炭素社会への大きな一歩としてEVタクシーと充電器を導入
福岡交通株式会社
拠点:福岡県従業員数:350名(2024年1月現在)文化タクシー株式会社
昭和25年(1950年)、福岡市にて創業。働きやすい職場づくりや女性ドライバー採用に積極的に取り組み、2021年「働きやすい職場認定制度」1つ星を獲得、2022年「女性ドライバー応援企業」に認定、2023年には「働きやすい職場認定制度」2つ星を獲得した。GXプロジェクトにより、2024年2月時点でEVタクシーを10台導入済み。2024年9月までにさらに10台導入予定。
拠点:福岡県従業員数:118名(2024年1月現在)
Index
はじめに
GOでは2023年4月より、全国各地でEVタクシーの本格展開を開始。計2,500台のEVタクシーの運行と、年間3万トンのCO2削減を目指し、タクシー産業GXプロジェクトを推進しています。
実はそれより前の2022年12月、全国に先駆け、東京・神奈川・福岡にてEVタクシーの実証を開始しました。そのとき福岡でご協力いただいたのが、福岡交通株式会社さまと文化タクシー株式会社さまです。
今回は、福岡交通 代表取締役の野上正嗣さまと、文化タクシー 専務取締役の副田哲子さまに、試験運転時のエピソードやEVタクシーの乗り心地、充電器を使用した感想、脱炭素社会への想いなどをお聞きしました。
- お話を伺った方々
- 福岡交通株式会社 野上 正嗣さま(代表取締役)
- 文化タクシー株式会社 副田 哲子さま(専務取締役)
- GO株式会社 佐々木 将洋(執行役員 / GX事業本部 本部長)
福岡交通と文化タクシーの会社紹介
昭和25年創業、同じ福交グループとして福岡の街を走り続ける
— まずは福岡交通さまと文化タクシーさま、両社の関係性を教えていただけますか?
野上(以下、敬称略):福岡交通も文化タクシーも昭和25年設立で、同じ無線を使用する「福交グループ」に所属しています。祖父の代に創業し、私も副田さんも3代目なんですよ。創業当時、福岡市内のタクシー会社が4〜5社バラバラに経営していたところを、副田さんのおじいさまと私の祖父が仲良かったこともあり、みんなで集まって共同無線やチケットの組合を作ったそうです。
副田(以下、敬称略):明治初期ころ福岡には炭鉱が数多く存在し、一時はたいへん栄えたようです。しかし昭和になり炭鉱が閉山になったため、そこで働いている従業員さんが行くところがなくなったそうです。そこで政府が「タクシー会社を作りましょう」と呼びかけを行い、同時期にタクシー会社が何社も設立されたと聞いています。
— お二人はどういうタイミングでタクシー業界に入ったのですか?はじめは違う会社に勤めていて、そのあと会社を継ぐことになったのでしょうか。
野上:はい、そうですね。私は駅前のシティホテルに就職し、そこで4年間働いてから福岡交通に入社。40歳のときに2代目の父が亡くなり、会社を継ぐことになりました。子どもの頃って、たとえば「プロ野球選手になりたい」みたいな大きな夢があるじゃないですか。私はそういう夢を持っておらず、「自分はきっとタクシー会社を継ぐんだろうな」とぼんやり考えていました。だから自然な流れではありますね。
副田:私は電機メーカーに勤務していました。その頃に父が亡くなったのですが、入社したばかりだったので3〜4年働きました。継ぐ前に海外に行かせてもらったり、保険会社でのインターンも経験し、そのあと会社を継ぎました。
— 現在EVタクシーや充電器を導入されていますが、両社ともそれ以前から『GO』アプリを導入されていますよね。アプリを取り入れた当時、周囲や乗務員さんの反応はいかがでしたか?
野上:福交グループが配車アプリを導入したのは「JapanTaxi」(『GO』の前身)よりも前の時代なので、もう8〜9年前でしょうか。当時はまだ、誰もがスマートフォンを持っているような便利な時代ではなく、周囲からは「アプリなんて意味ないよ」といった意見が多かったのですが、いま考えると導入してよかったなと心底思います。
副田:当時の乗務員さんの反応は二極化していました。興味がある人と、「機械はちょっと…」という人がいましたから。さすがにいまは、みんな便利に活用しています。アプリ導入前は、無線に対するジレンマがありました。システム自体が私たちの思うような方向にいっておらず、「将来はウェブを活用して配車や支払いができるようになりそうだね」と話していました。それが現実になっているので、驚いています。
EVタクシーと充電器を導入したことによる効果・変化
EVは乗り心地がよく、疲れにくい。燃料費削減という大きな効果も!
— 2023年4月からの全国での本番運行に先駆け、2022年12月からEVタクシーの実証を開始されたそうですね。EVタクシーと充電器をそれぞれ何台ずつ導入されたのでしょうか。
佐々木:EVタクシー(新型リーフ)を福岡交通さん2台・文化タクシーさん1台、急速充電器を各1台、普通充電器は福岡交通さんに2台導入いただきました。
— 先行して何かを始めるって、すごい決心だと思います。お二人は迷いや不安などはありませんでしたか。プロジェクトへの参加を決めた理由も教えてください。
野上:燃料の高騰に頭を痛め、現行タクシーに必要なLPガスが充填できるガスステーションも年々減っています。さらに、世の中はSDGsへ向かう流れの中で、タクシー会社ができることはないのか?と考えていたところに、GOさんからどちらも解決できる夢のようなお話をいただき、参加を決めました。弊社だけでしたらもっと悩んだと思いますが、同じ福交グループの文化タクシーさんと一緒に取り組めたことも心強かったと思います。
副田:私も同じです。燃料費が高騰し、新しいタクシー車両について考える時期だったこともあり、GOさんからこのプロジェクトのお話をいただき飛びつきました。タクシー事業者にとって、車からの二酸化炭素の排出量を減らすことは脱炭素社会への大きな一歩だと思います。EVを導入したことにより、会社として意識していることや向かうべき方向性を社員にも理解してもらえますしね。
— EVタクシーを運転した乗務員さんの反応はいかがでしょうか。
副田:乗務員さんからは「エンジンの振動もなく静かで疲れにくい」という意見をよく聞きます。乗り心地が良いということでたいへん好評です。
佐々木:それはよかったです。アクセルペダルから足を離すとブレーキも同時に効くので、他のタクシー事業者さんから「ほとんど足を入れ替えなくていいから楽だね」といった感想もいただきました。
副田:そうですね。乗り心地がいいのはもちろん、EVなら自社で充電できるので、その点でも楽になりました。いままではわざわざ外のガスステーションまでLPガスを充填しに行っていましたから。ガスステーションは夜20時頃には閉店してしまいますが、自社ならいつでも充電できますしね。
— 現在、両社ともEVタクシーを各20台ほど導入されていますが、充電タイミングについては、どうやってコントロールされていますか?「会社に戻って帰ってきたけど充電器が空いてない」といったことはないのでしょうか。
副田:GOさんがそのタイミングを教えてくれる仕組みを作ってくれたので、充電がバッティングすることはありません。
佐々木:乗務員さんのシフトに合わせてGOが充電器の予約時間を裏側で設定し、「そろそろ予約時間ですよ」と通知する仕組みになっています。
野上:おかげで、無理のないタイミングで充電できています。昼勤務の人は夕方に会社に戻って車に充電ケーブルを差し込み、次の朝まで充電する。夜勤務の人は夕方15〜16時くらいに出社し、夜中に会社に戻って充電ケーブルを差し込んで帰る、といったタイミングで回しています。途中で充電せずに乗務できるため、EVへの乗務希望が多くなりましたし、EVを中心に稼働させることで、かなりの燃料費削減ができました。EVを導入した効果が目に見えて出ているので、乗務員だけでなく管理スタッフの意識も変わってきたなと感じています。
長距離運転では思わぬハプニングも
— EVタクシーを運行していて、なにか印象的なエピソードなどはありましたか?
副田:運転していた乗務員さんが、会社に戻れなくなったことが一度だけありました。福岡から湯布院に行きたいという長距離のお客さまが乗車されたそうなのですが、目的に到着したはいいものの、帰る分の充電が足りなくなってしまったんです。その乗務員さんはクレジットカードを持っておらず、現金で充電できるところを探したようですが、なかなか見つからず。連絡をもらってみんなで探してやっと充電でき、なんとか会社に戻ってきました。以来、乗務員さんにはクレジットカードを持っているかどうか確認するようにしています(笑)。
佐々木:充電スポットは営業所さんには置かせていただいていますが、街中に設置するための実証の準備は進めておりますので、もう少しお待ちください。他に、EVや充電器について何か困っていることはございませんか?
野上:街中に充電スポットがあればいいなというほかには、特にないですね。予想以上の距離を走りますし、EVはとても評判いいですよ。新型リーフを使うのが初めてだったので、一回の充電でどのくらいの距離を走るのか、バッテリーの寿命はどのくらいかなど未知の部分はありましたが、システムなどに対する不安や不満、問題は何もないです。GOさんからこの話をいただいてなかったら、EVは導入していません。GOさんには本当に感謝です。
副田:同じく、全く困っていませんね。EVではありませんが、弊社の管理スタッフは「ドライブチャートが便利!」とよろこんでいます。
佐々木:ありがとうございます。GOが開発・提供している「ドライブチャート」は、ドライブレコーダーとAIを組み合わせて、事故の要因となりうる危険運転を自動検知するサービスです。今回EVタクシーに導入し、みなさんに使っていただいています。
副田:ドライブチャートで新人の乗務員さんの走りをチェックして、「こうしたほうがいいよ」とアドバイスしています。そのおかげかEVでの事故が一件もないんですよ。だからEVに限らず、全車へのドライブチャートの導入を前向きに考えています。ある程度費用はかかりますが、事故が起きることを考えると安いものです。他のタクシー事業者さんにもオススメしたいくらいです。乗務員さんとしては、見られているのが分かるので緊張感はあるみたいですが。
環境に良い車両を取り入れることで、脱炭素への取り組みを推進
助成金の申請手続きもGOがサポート
— GX事業はGI(グリーンイノベーション)基金に採択されているため、政府からの助成金が活用されているとお聞きしました。申請手続きの面ではいかがでしたか?
野上:手続きもGOさんが進めてくださいました。私たちが会社単体で国に助成金を申請すると、事務作業が大変で、書類を作るだけでもすごく手間がかかるんですよ。今回はGOさんがEVと充電器の導入、助成金の申請手続きまで全部コミコミのパッケージを用意してくださったので、EV導入のハードルが下がりました。
副田:手続きの手間が省けるのは大変助かりましたし、今回は本当にタイミングがよかったと感じています。燃料費は高くなっていますし、長年使用してきたコンフォート*もなくなることになっていましたし。それに、SDGsという言葉をよく聞くものの、「福岡の中小企業は何からはじめたらいいんだろう、どうしようかな…」と悩んでいたところにGOさんから話がきたんです。GOさん、いつも目のつけどころがすばらしいですよね。
*コンフォート:タクシー専用車として親しまれてきたトヨタの車種。2017年に生産終了したため、現在は新車を購入することができない。
佐々木:EV導入の意思決定はとても繊細なものだったと思いますが、全国に先駆けて導入していただき本当にありがたいです。アプリからのお付き合いもありますが、充電器設置前に現地に何度かお邪魔して、「ここに充電器置いていいですか」「ここだとちょっと取り回しが良くなさそうですね」など、密にコミュニケーションをとり、より信頼関係を築けたことも大きかったと思います。今回のプロジェクトは初めての試みだったので、想定される事前検証はすべて行いましたが、それでも実際にやってみないとわからない部分はあると思っており、我々も緊張したリリースでした。いまだから言える話ですが、システムエラーログなどが出ていないかは、全員で食い入るようにみてましたね。大きなトラブルなく運行開始できたときは、胸を撫で下ろしたのをいまでも鮮明に覚えています(笑)。
副田:こういったプロジェクトを通して車両から環境の良いものに変えることができれば、私たちタクシー事業者にとっては脱炭素社会への第一歩になりますよね。
佐々木:そうですね。いまは『GO』でタクシーに乗車するお客さまに、CO2排出量と削減量を可視化することで、環境にいいものを選ぶという意識も醸成しています。EVの台数が全体的にもう少し増えたら、お客さまから「EV車指定」が可能になるかもしれません。そうなるとお客さまだけでなく、EVを導入したタクシー事業者さんにとっても売上が増えるなどのメリットがありますし、相乗的に脱炭素社会を加速することができると考えています。
タクシー事業者として、今後GOに期待したいこと
EVや『GO』アプリを活用しながら、脱炭素社会に貢献していきたい
— 今後もEVタクシーをさらに追加導入しようというお気持ちはありますか?
副田:はい、従業員が増えればぜひ増やしたいです。実は10台追加しようとしたのですが、社内から「ちょっと待ってください。従業員が足りません」とストップがかかりまして…。タクシー業界の求人はたいへん厳しい状況で、応募がきても辞めていく人が多いんですよ。高齢の方が多かったり、体調を崩して退職される方もいますから、なかなか人員は増えませんね。
佐々木:EVは運転がしやすく、体の負担が軽減されるといったメリットもありますから、求人の面でも今後アピールできるかもしれませんね。
— 今後のGOさんへの要望や、期待することをお聞かせください。
副田:『GO』アプリを活用することで、タクシー乗務員は流し営業をすることが少なくなり、以前よりも効率化が進みました。GXの取り組みはもちろんですが、こういった無駄な移動を減らすことも脱炭素につながっていますよね。これからもGOさんを通じたITの活用で、さらに脱炭素に貢献していきたいです。
野上:副田さんと同様、無駄な走りをなくして効率よく実車できるよう、GOさんには過去のデータや実績に基づいた走行ルート案内などを開発していただきたいなと思います。今後のGOさんの取り組みにも大いに期待しています。